ウェゲナー肉芽腫症について
1. ウェゲナー肉芽腫症とは
この病気は、1939年にドイツの病理学者であるWegener博士が、鼻と肺の肉芽腫を認め、同時に全身の血管炎と壊死性半月体糸球体腎炎を示した3剖検例を発表し、世界で初めて独立した疾患として報告されました。そこで、発見者の名前をとってWegener(ウェゲナー)肉芽腫症と呼ばれるようになりました。発熱、全身倦怠感、食欲不振などの炎症を思わせる症状と、鼻、眼、耳、咽喉頭などの上気道および肺、腎の3つの臓器の炎症による症状が、一度にあるいは次々に起こってきます。その原因は、今のところわかっていませんが、全身の血管の炎症による病気(血管炎)の一つで、免疫の異常が病気の成り立ちに重要な役割を果たしています。
2. この病気の原因はわかっているのですか
原因および病態:はっきりした原因は現在のところわかっていません。最近、この病気の患者さんの多くの方の血液中に抗好中球細胞質抗体(ANCA)という自己抗体を持っていることがわかってきました。ウェゲナ-肉芽腫症の患者さんには、ANCAの中でもC(PR-3)ANCAという自己抗体が特異的に見出され、病気の発症や進行に深く関わっていることが考えられています。すなわち、C(PR-3)ANCAが、風邪などの上気道感染の後に炎症によって産生されたサイトカインとともに好中球を活性化し、各種の悪害因子を放出し血管炎や肉芽腫を起こすと見なされています。
誘因:上気道の感染をきっかけにこの病気が発病したり、細菌感染により病気が再発したりすることが多く、感染症が病気の増悪因子として注意する必要があります。
3. この病気ではどのような症状がおきますか
一般的に発熱、食欲不振、倦怠感、体重減少などの全身症状とともに、
- 1)上気道の症状(膿性鼻漏、鼻出血、難聴、耳漏、耳痛、視力低下、眼充血、眼痛、眼球突出、咽喉頭痛、嗄声など、
- 2)肺症状(血痰、咳嗽、呼吸困難、肺浸潤など)、2)腎症状(血尿、乏尿、浮腫など)、
- 3)その他の血管炎を思わせる症状(紫斑、多発性関節痛、多発神経炎など)が起こります。
普通は、1)→2)→3)の順で起こることが多いのですが、必ずしも順番通りではありません。1)、2)、3)のすべての症状がそろう場合を全身型ウェゲナー肉芽腫症、3)を除き1)、2)のいずれか2つ以上の症状を示す場合を限局型ウェゲナー肉芽腫症と呼びます。すなわち、この病気の患者さんはすべての症状が起こるわけではなく、一人一人によってでてくる症状、障害される臓器障害が違うことにも理解を要します。最初は、鼻や耳の病気、あるいは胸の病気を思わせる症状がでて、後で腎臓を含め全身の血管炎による多臓器の症状を呈する場合があり、注意が必要です。
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