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ミトコンドリア病について

1. ミトコンドリア病とは

ミトコンドリアは全身のひとつひとつの細胞の中にあってエネルギーを産生するはたらきを持っています。そのミトコンドリアのはたらきが低下すると、細胞の活動が低下します。たとえば、脳の神経細胞であれば、見たり、聞いたり、物事を理解したりすることが障害されます。心臓の細胞であれば、血液を全身に送ることができなくなります。筋肉の細胞なら、運動が障害されたり、疲れやすくなったりします。

ミトコンドリアの働きが低下することが原因である病気を総称してミトコンドリア病と呼んでいます。多くは生まれながらにしてミトコンドリアの働きを低下させるような遺伝子の変化を持っている方が発症しますが、薬の副作用などで二次的にミトコンドリアのはたらきが低下しておきるミトコンドリア病もあります。

2. この病気の原因はわかっているのですか

ミトコンドリアの働きを低下させる原因として、遺伝子の変化に由来する場合と、薬物などが原因でおきる場合があります。大部分は遺伝子の変化でおきるであろうと考えられていますが、ミトコンドリアのはたらきに関わるタンパク質は優に1000を超えると推定されており、それらの設計図である遺伝子の変化がすべてミトコンドリア病の原因となる可能性があります。すでに200種類程度の遺伝子の変化がミトコンドリア病に関係することがわかっています。
さらに、これら遺伝子には、細胞の核と呼ばれるところに存在する核DNA(通常のDNAです)に乗っている遺伝子と、ミトコンドリアの中に存在する別のDNA(ミトコンドリアDNAといいます)に乗っている遺伝子があります。新しいミトコンドリア病の原因が核DNA上の遺伝子から次々と明らかにされています。また核DNAに比べると短いミトコンドリアDNA上の遺伝子にも、病気に関係する変化が患者さんで見つかっています。
ミトコンドリアDNAはミトコンドリアの中に存在していますが、実は1個のミトコンドリアの中に5〜10個くらい入っています。そのようなミトコンドリアはひとつひとつの細胞に数十から数百個あるので、1細胞でみるとミトコンドリアDNAは数千個も存在していることになります。ですので、数千個もあるミトコンドリアDNAのほんの一部が変化しても細胞のはたらきに何も影響しないし病気にもなりません。ミトコンドリアDNAの変化で病気になっている人は、通常は変化したミトコンドリアDNAの割合が高いことが知られているのです。

3. この病気はどういう経過をたどるのですか

血液のように古い細胞はどんどん消滅して新しい細胞に置き換わるものもあれば、脳の神経細胞のように少しずつ消滅していっても新しいものに置き換わることがないものもあります。このような細胞毎の特徴から、神経症状のように徐々に症状が重くなる場合も、逆に、乳児期にみられる貧血(ピアソン病)などのように徐々に軽くなる場合も知られています。
ミトコンドリア病の臨床経過も、急性に現れる場合、ゆっくり症状が現れる場合、ゆっくり改善する場合、ほとんど変わらない場合などあらゆる経過がありうることになります。ミトコンドリア病の患者さんの将来予測はたいへん難しいというのが現状です。

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