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表皮水疱症(接合部型及び栄養障害型)について

1. 表皮水疱症とは

皮膚は、外界に接する側から順に、表皮、真皮および皮下組織の3層から成り立っています。表皮と真皮の間には、基底膜と呼ばれる強靭な膜が存在し、表皮の一番下層にある基底細胞がこの基底膜に鋲でとめられています。
表皮水疱症とは、皮膚の外表に近い部分(表皮ならびに真皮上層)や粘膜に水疱(水ぶくれ)やびらん(ただれ)を生じる遺伝性の疾患です。正常な皮膚でも、強い外力や摩擦により水疱が生じます(スポーツ後の手や足にできるまめなど)が、この表皮水疱症という疾患では、日常生活における非常に弱い外力でも容易に水疱やびらんを形成してしまいます。重症の場合には、繰り返して形成される水疱やびらんのために手や足の指趾の皮膚が癒着するなど、日常生活が困難となることもあります。
表皮水疱症は、その遺伝形式と水疱の形成される部位によって以下の4型に大別されます。
最近の研究の進歩により、それぞれの疾患の起きる原因も解明されてきています。
表皮水疱症大別表

2. この病気の原因はわかっているのですか

いずれのタイプの表皮水疱症もその原因がわかってきています。

(a)単純型表皮水疱症
表皮の一番下層(真皮側)にならんでいる基底細胞が融解することによって生じます。
専門的には、表皮を構成する微細構造のうち、細胞の骨格であるトノフィラメント、およびトノフィラメントを基底細胞の底面に接着させる装置であるヘミデスモゾームに異常が認められます。原因となる遺伝子異常としては、前者はケラチン5、14遺伝子、後者はプレクチン遺伝子の異常が報告されています。
(b)接合部型表皮水疱症
表皮と真皮は基底膜という強靭な膜で境界されていますが、この基底膜から表皮がはがれて、水疱を生じます。
専門的には、接合部(表皮・真皮境界部)において鋲の役割をしているヘミデスモゾームや、表皮細胞を基底膜につなぎとめる線維であるアンカリングフィラメントの異常が認められます。原因となる遺伝子として17型コラーゲン、ラミニン332(以前はラミニン5と呼ばれていました)、α6とβ4インテグリンなどの遺伝子異常が指摘されています。
(c)栄養障害型表皮水疱症
基底膜と真皮とをつないで安定させている係留線維と呼ばれる線維束がありますが、その構成成分として7型コラーゲンが明らかになっています。この7型コラーゲンの異常によって基底膜と真皮の結合が弱くなり、水疱を形成します。
(d)キンドラー症候群
キンドリン‐1というタンパクが異常であることにより発症します。

3. この病気ではどのような症状がおきますか

すべての病型に共通するのは、前述の通り、非常に軽微な外力(機械的刺激)で、容易に水疱やびらんを生じるということです。生下時や幼少時から始まり、長年にわたって症状が持続することも特徴です。
(a)単純型表皮水疱症
水疱が表皮内にできるため、水疱やびらんの治癒した後に瘢痕や皮膚萎縮を残さない(きれいに治る)ことが特徴です。ケラチン5/14、プレクチンの遺伝子のどの部位にどのような遺伝子変異があるかによって重症度が変化します。この病型の中には、皮疹が手足に限局するタイプや稀な病型として小児や成人になってから筋肉の萎縮を伴うタイプ(筋ジストロフィー合併型単純型表皮水疱症)もあります。夏に増悪して冬に軽快し、また加齢に伴い軽快することが多いです。
(b)接合部型表皮水疱症
治癒するときに、瘢痕は残しませんが、皮膚萎縮を残すことが特徴です。 生まれた頃から水疱やびらんを形成し、頭部の脱毛、口腔粘膜などの粘膜病変を伴い、さらに歯や爪にも症状が現れます。
幽門閉鎖症合併型はα6β4インテグリンの遺伝子変異により発症します。全身に水疱を認め、さらに胃の出口である幽門部の閉鎖を合併します。
(c)栄養障害型表皮水疱症
加齢に伴い軽快傾向が見られるものが多いですが、治癒後の皮膚瘢痕や爪の変形、指趾の癒着をきたすこともあります。ときに、口腔や消化管の粘膜も障害されます。
重症例では、全身に水疱・びらんが多発し、著明な瘢痕を残します。歯や爪、頭髪の異常や、粘膜障害が高頻度に見られ、いろいろな機能障害をきたします。多くが、生涯を通じて難治性です。

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