性炎症性脱髄性多発神経炎について
慢性炎症性脱髄性多発神経炎について
1. 慢性炎症性脱髄性多発神経炎とは
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: CIDP)とは、2ヶ月以上にわたって進行性または再燃性の左右対称性の四肢の運動・感覚性障害を示す末梢神経の疾患(神経炎)です。四肢の健反射は消失 あるいは低下します。症状としては手足の脱力や筋力低下が左右対称性に出現し、このため足に力が入らなく、転びやすくなったり、手の脱力のため物をうまくつかめなくなったりします。また、感覚障害により手足のしびれ、ピリピリする痛みなどを認めることもあります。CIDPの原因は現在もなお不明ですが、自己の末梢神経に対する免疫異常がその原因ではないかと考えられています。
数日から約1週で発症する急性炎症性脱髄性多発根神経炎(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy: AIDP 別名:ギラン・バレー症候群)に対して、CIDPの発病は急性、亜急性あるいは慢性の時もありますが、経過は2ヶ月以上にわたり緩徐に進行する型(慢性進行型)、再発と寛解を繰り返す型(再発寛解型)があります。末梢神経を電線に例えますと、脱髄とは銅線を保護するビニールの絶縁体の所々が脱落するような状態です。末梢神経は銅線となる軸索とそれを覆う絶縁体にあたる髄鞘(ミエリン)により構成されていますが、CIDPではこのミエリンが原因不明に障害される疾患(脱髄)です。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎もいずれも同一疾患で根の有無により疾患は異なりません。また、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーと表現される場合がありますが、これらもCIDPです。
2. この病気の原因はわかっているのですか
原因はまだはっきりしていません。ギラン・バレ-症候群と同様に自己の末梢神経を攻撃してしまう自己免疫異常がその原因ではないかと考えられています。血液に末梢神経ミエリン構成成分(蛋白や糖蛋白など)に対する自己抗体が出現したり(液性免疫)、あるいは細胞性免疫などの異常が指摘され、自己免疫異常が関与することは明らかです。
3. この病気ではどのような症状がおきますか
脊髄から出て四肢、体幹の筋を支配する末梢運動神経(障害されると四肢の脱力となります)、皮膚、関節などから脊髄へ入る末梢感覚神経(障害されると四肢のしびれ、痛みを認める)が障害されるために、四肢の運動麻痺、感覚麻痺(鈍麻、異常感覚など)がおこります。
時に脳神経も障害され、舌・咽頭節麻痺、顔面節麻痺、ごく稀に呼吸麻痺がおこることもあります。再発寛解を繰り返し、あるいは慢性進行性に末梢神経が障害され筋萎縮、感覚の脱失も出現します。臨床的にはおおよそ80%が運動障害優位の運動感覚障害型、10%が純粋な運動障害型、10%が感覚障害優位型です。
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